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その美しさは露に濡れた嫋やかな華。
その艶やかさは闇夜に舞う鮮やかな蝶。
折れぬ芯を柔らかな肢体の中に秘め、己が宿命を全うす。
それが遊郭に身を委ねた、私達の生き方。
遊女として生き、遊女として死ぬ。
多くの者が通った道を自分も歩んでいくのだろう。そう、思っていた―


夜伽遊戯


「俺が客として来るのがそんなに不思議か？」
「一夜の夢、幻を提供するのがあたいらの仕事。なのに、何でだろうね。
あんたといるとこっちが夢を見ているような気がするよ」
「無理よ。この檻からは誰も抜け出せやしないわ」

「どうすればいい、だと？簡単だ。逃げぬよう羽根をもぎ取ってしまえばいい」

「すいやせん。ただ、こいつァ俺がとっくに予約済みなんで持って行かれるのは困りやす」
「今まで有難う、お侍さん。だけどあたしは、ここまで」
「…ぐだぐだ言ってんじゃねえ。行くぞ」

手にて手を取った逃走劇。
追っ手に追われ指名手配され、日を見れない身となっても私の手を引き続ける彼の背中を見つめる。
―ねえ、私は今まで希望を持つことを諦めていたのよ。
叶わないなら最初から願わない方が絶望することもないでしょう？
でも、でもね。今、…一筋の奇跡でもいい、信じたいと思う私がいるの。

――どうかこの人と、これからを共にさせて下さい。

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